記事番号: 1-1047
公開日 2022年11月04日
更新日 2023年02月21日
地中熱交換パイプ(Uチューブ)
地中熱利用システムは、外気温と地中の温度差を利用してヒートポンプで熱交換を行うものです。地中と熱のやりとりを行うため、地中熱交換井(井戸)の中に熱交換パイプ(Uチューブ)を挿入し、熱交換パイプの中に水(または不凍液)を循環させる必要があります。
地中熱交換井に挿入する熱交換パイプについては、今回使用するシングルUチューブのほかにダブルUチューブがあります。シングルUチューブなら2本、ダブルUチューブなら4本の管が地上部に出ることになります。
今回の工事で採用する熱交換パイプは、特殊な形状のものとなり地中熱の利用が盛んなヨーロッパで使われているスイス製のものを採用しています。(PowerwaveシングルU字パイプ)
素材はPE100ポリエチレン製、外径63.0mm、1巻あたりの長さは51mです。この製品は熱交換パイプの表面が蛇腹状になっており、従来のものよりも表面積を大きくすることで、従来品よりも熱交換効率を向上させる目的があります。
今回の現場は、作業スペースが限られるため、トラッククレーンにより鋼製送入器に巻きつけた熱交換パイプ(Uチューブ)を井戸の上部に配置して行います。また、挿入時は井戸の中の水などによる浮上りを防止する為、あらかじめ熱交換パイプ(Uチューブ)の中を水で充填しています。今回はさらにUチューブの最深部へ丸鋼製のウェイト(長さ600mm 重さ約30.0kg)を1本装着します。
今回使用する熱交換パイプ(Uチューブ)の挿入作業は準備を除くと1箇所あたり5分程度で完了します。挿入後、地表部分からの土砂や雨水を遮断するため、GL(設計時の地面の高さのライン)から深さ6mの位置に、あらかじめUチューブにスポンジと網(ポリプロピレン製)を巻き付けておきます。
横引き配管後、さらにより遮水性を高めるために、セメントミルクを注入します。このセメントミルクが深さ6m以深に流れ落ちないように、スポンジと網の上部に砂を厚さ約50cmになるまで投入し隙間を埋めます。
熱交換パイプ(Uチューブ)が井戸の底に到達したことを確認したらUチューブを切断します。この時、Uチューブは直径が63.0mmあることから、外側のVP150ケーシングパイプの内側では、EFレデューサ(管継手)を並べて配置できないため、取付位置を上下に1mずらして切断を行います。
次に、このあと接合する高密度ポリエチレンパイプの横引き配管と接合するために高密度ポリエチレンパイプとEF(エレクトロフュージョン)接合を行います。これは一般的な水道工事でも広く使われている方法です。EF接合では、管融着面の切削(スクレープ)を行った後に、エタノールで融着面を清掃し確実に融着させます。融着の時間は、専用機器を使い製品のバーコードを読み取ることで自動的に検出されます。
※EF(エレクトロフュージョン)接合・・・電熱線を埋め込んだ接手を挿入した後に、専用のコントローラーから通電して電熱線を発熱させ、継手と管の樹脂を加熱溶融して接合する方法。
正しく熱交換器が挿入されたかを、パイプ内に検尺棒(通線工具)を挿入し測定します。
問題が無ければ、次に耐圧試験を行います。ポンプで熱交換器内の空気を抜きながら水を充填していきます。地中熱システムは熱交換に水を使用しているため、施工段階での傷等による漏れの確認を目的として耐圧試験を行います。
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