記事番号: 1-2899
公開日 2023年02月21日
地中熱利用システムでは、冷暖房として利用する場合、地中熱交換器と建物の中にある地中熱ヒートポンプを接続し、地中と建物との間で熱エネルギーのやりとりを行います。そのためには、地中熱交換器と地中熱ヒートポンプをパイプで接続し、パイプ中の水(または不凍液)を循環させる必要があり、パイプを地中へ埋設する横引き配管工事を行いました。
図1:熱交換パイプとヒートポンプの関係イメージ図
本工事では、「セミクローズドループ方式(地下水移流型熱交換器)」27本と、R2年度の事前調査時に設置した「クローズドループ方式」1本の合計28本の地中熱交換器を建物の入口までパイプで接続する配管を行いました。配管には150㎜~25㎜までの太さの高密度ポリエチレンパイプを使用します。これは、一般的な水道工事で使用するものと同様のものです。設計時において、循環する水の圧力が一定となるように計算し、配管経路ごとの管の太さや長さを決定しています。
また、不具合が生じた場合に対応するために、数か所に仕切弁を設置するほか、配管内の空気を抜くための空気弁も設置し地表部分には金属蓋を設置します。
写真1 使用する配管(高密度ポリエチレンパイプ)
作業手順について
主な作業手順は次のとおりです。
①地中熱交換器(井戸・Uチューブ)を傷つけないように、配管ルートを掘削。
②高密度ポリエチレンパイプで配管。(EF接合)
③配管完了後に耐圧試験を実施。
④配管パイプの埋戻し。※上部に埋設表示シートを埋める。
図2:配管ルートのイメージ図
配管は地表から60㎝の深さになるように設置し、熱交換パイプ(Uチューブ)の挿入工程で設置した高密度ポリエチレンパイプへ接合します。接合方法は、EF(エレクトロフュージョン)接合で行います。
EF接合では、管融着面の切削(スクレープ)を行った後に、エタノールで融着面を清掃し確実に融着させます。融着の時間は、専用機器を使い製品のバーコードを読み取ることで自動的に検出されます。これは、一般的な水道工事に用いる方法と同じ方法です。
※EF(エレクトロフュージョン)接合・・・電熱線を埋め込んだ接手を挿入した後に、専用のコントローラーから通電して電熱線を発熱させ、継手と管の樹脂を加熱溶融して接合する方法。
熱交換パイプ(Uチューブ)との接続が完了後、地表部分からの土砂や雨水を遮断するために、熱交換器挿入作業の工程で準備したケーシングパイプ内にセメントミルクを注入します。また、今回の使用している特殊形状の熱交換パイプが、夏場の冷房利用時に高温となり伸縮することを想定し、あらかじめUチューブの最底部分を浮かせた状態で地上側を金具で固定しています。
(写真2:セメントミルク注入の様子) (写真3:熱交換パイプ(Uチューブ)の封入後の様子)
今回、地中熱交換器を設置する場所は、作業スペースが限られるため掘削により発生する土砂の仮置きスペースを確保するために、前半部分と後半部分に分けて施工することとし、耐圧試験が完了後に埋戻しを行いました。
(写真4:現場の全体の様子)
埋戻しでは、地中に配管があることを明示するため、土被り150㎜程度の深さに埋設表示用のテープを埋設します。
本工事は地中熱の専門業者でなくても、ある程度の知識を有していれば、一般的な水道工事の実務経験がある業者であれば可能であり、そのため、今後、各地域での地中熱の普及を進めるには、多くの業者に施工機会を設けることが必要です。
前の記事 9.地下水移流型の地中熱ポテンシャル調査結果について
- 過去の記事を見たい方はこちらからご覧ください。