公開日 2022年06月08日
〔田中繁則君質問席へ移動〕
○田中繁則君 皆さん、おはようございます。
早速ですが、通告書に従いまして大綱2点について質問いたします。
大綱1、地域資源を活用した着地型観光の推進について。
八幡浜市は、人口減少、少子・高齢化に対応した持続可能なまちづくりを推進するため、地方創生政策の基盤となる第2期八幡浜市まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、施策の実現に取り組んでいるところであります。
創生総合戦略は、4つの基本目標の下、地域の厳しい現実を明るい未来の展望につなげる施策が示されており、私は基本目標に、市の知名度を向上させ移住者、観光客、ファンを増やす取組の一つである地域資源を活用した着地型観光の推進に着目し、本市の観光政策について質問いたします。
令和3年策定の八幡浜市過疎地域持続的発展計画、産業の振興の中で、当市の観光及びレクリエーションの現況と問題について次のように指摘しています。年間を通して安定的に観光客を誘致できる全国的な知名度を誇る景勝地や歴史的建造物といった観光資源に乏しいであります。
みなっと等の商業施設や産業まつり、花火大会などのイベントには多くの人が集まるが、取り立てて魅力のある観光資源は思い当たらないとの市民の言葉を耳にすることが多く、観光に対する関心は決して高くない現状であると感じております。
今、観光産業は世界的なSDGs持続可能な開発目標への対応や感染症拡大も相まって大きく変化しつつあります。画一的なサービス、物産の購入・消費を中心とする観光から、着地型観光という地元発信型の観光スタイルの人気が高まっており、地方においても地域住民との交流や生活文化体験を売りにした観光商品の開発が進んでいます。住んでいるがゆえに価値に気づいていない有形・無形の地域資源は本市にも数多く存在しており、これらをどう観光につなげていくか、行政、市民、事業者等のより一層の連携が求められているところであります。
八幡浜市の観光資源の実態や観光スタイルの変化を踏まえ、今後10年、さらにその先を見据えた観光振興政策について、どのような展望を持たれているのか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 市長。
○市長(大城一郎君) 観光振興政策の展望という点でありますが、平成25年に八幡浜みなっとがオープンし、今や県内有数の観光スポットとして定着しつつあるところであり、これからもこの年間100万人超える集客力を持つみなっとの観光の拠点として今後さらに魅力を高めていくこと、そしていかにして来訪者の滞在時間、これを延ばしていくかが次のステップになると考えております。
その第1弾が、現在の観光センタービルやフェリー用駐車場の跡地を活用する八幡浜港みらいプロジェクトで、このプロジェクトでは、港湾機能の強化とともに、観光客はもちろん市民にも喜ばれる八幡浜らしさを生かした商業施設の誘致などに取り組んでいきます。
また、滞在時間の延伸という点では、来訪者の回遊性を高めることも必要であります。近年みなと湯、黒い商店街、大島テラス、みなせなど新たな観光スポットもでき、コロナで水を差されはしましたが、少しずつ効果が見え始めてきているところです。
さらに、これからは四電跡地プロジェクトもあり、今後はこれら全体を生かすコーディネート力、これが試されるのだと思います。
そして、旅行に対するニーズの変化も踏まえた展開、戦略も大事になってきます。
近年はかつての団体旅行に象徴されるような、みんなが同じ行動をする定形型から、食やスポーツ、文化などの体験や交流を通して一人一人の満足度を重視する旅行スタイルに変化しています。さらに、新型コロナの拡大により、仕事と余暇、ワークとバケーションを組み合わせたワーケーションや3密を回避できるアウトドアなどの自然体験、近場での修学旅行などの需要も高まってきました。
このような中、本市には先ほど話した観光スポットに加え、ミカン、魚、ちゃんぽん、マーマレード、サイクリング、保内の町並みや松村建築など、新旧様々に活用可能な観光資源がありますので、やり方次第で旅行スタイルの多様化が追い風になると考えております。
さらに、こんな話もあります。本市には、先ほど議員おっしゃいましたが、全国的な知名度を誇る景勝地や歴史的建造物がないと思われているところもありますが、世界を旅した世界まちかど地政学の著者であります藻谷浩介さんが、八幡浜市のことを南イタリアのアルベロベッロやアマルフィに似ていると評されておりまして、世界に通用する景勝地であると述べられています。これはここに住む我々が気づいていないだけで、観光資源になり得るものが現に存在することを示唆しており、アンテナを張り感性を磨くことで本市の観光資源はさらに多様化していくものと思います。
そして、これらの観光資源を生かす一翼を担うのが、平成30年に設立をしました一般社団法人八幡浜市ふるさと観光公社で、公社には本市と深い関わりを築いていけるような機会を提供する着地型観光の推進に大きな期待を寄せています。
このような取組は、観光客など交流人口の拡大のみならず、最近注目されている関係人口、さらには定住人口の増加にもつながりますので、市としてもしっかりとサポートしていきたいと思っているところです。
観光振興においては、本市の強み、八幡浜らしさをまずは知り、生かすことが最も大切なことだと思います。ここを基本に様々な関係機関、市民団体などと連携しながら、各事業が連動し、相乗効果が生まれる、そんな形で観光施策を展開していきたいと考えています。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 ただいま市長から答弁いただきましたけれども、最後の連携それから相乗効果ということ、私も全く同感であります。
コーディネート力それから滞在時間を延ばすということもこれから大きな課題だと思いますので、また後ほど申し上げますけれども、ふるさと観光公社、地域DMOについてもこれから考えていただきたいと思います。
また、観光振興につきましては、宿泊、飲食、物産、交通などの産業の売上げを増やして経済活性化を図るのはもとより、市民が地域の魅力に気づき、町に誇りと愛着を持ち、まちづくりへの参画意識を醸成することにもつながります。その観点からも、今たくさんの具体的な施策について説明いただいたんですが、市が観光政策に本腰を入れ、行政、事業者、各種団体等が協働して施策の実現に邁進するためには、持続可能なまちづくりを基盤に置いた部署横断型の総合的な観光戦略ビジョンの策定が必要になるのではないかと思われます。そのような考えはあるのかどうか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 市長。
○市長(大城一郎君) 観光戦略ビジョンは、将来目指すべき方向性を多様な関係者が共有し、一貫性や一体性のある観光まちづくりを推進するために策定されるもので、近隣では大洲市や宇和島市が策定をしております。
本市においては、現在観光戦略ビジョン、これは策定しておりませんが、目指すべき方向性や目標値、具体的な取組内容などは、まち・ひと・しごと創生総合戦略に記載されていることから、現段階では新たに策定する予定はありません。
ただし、部局横断型の取組が必要ではないかという点については、今後部署間での情報共有や連携により一層努めてまいりたいと考えております。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 本市では、着地型観光推進のかじ取り役として、先ほどの答弁にもありましたが、平成30年に一般社団法人八幡浜市ふるさと観光公社を設立し、新たな観光資源を掘り起こして、もうかる観光産業の振興を図るという思い切った政策を打ち出しています。
その際、当時は先進的であったDMO登録を目指し、2年間の実績を踏まえて昨年3月に地域DMOとして認定されています。
DMOは、観光地域づくり法人を意味し、関係省庁からハード・ソフト両面から手厚い支援を受けられます。ふるさと観光公社は、地域DMOとして観光によって地域の稼ぐ力を引き出すと同時に、住民の地域への誇りと愛着を醸成し、交流人口、関係人口の増加につなげるという役割を担っています。
一般社団法人として独立し、市からの業務受託によって運営されていますが、実質的には市行政の枠組みにあることを踏まえ、質問いたします。
八幡浜市ふるさと観光公社は、設立して3年が経過し、地域DMOとしても1年が経過しようとしています。感染症拡大による観光産業の停滞という側面を考慮した上で、業務委託者として設立後の業績評価をお伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 副市長。
○副市長(菊池司郎君) ふるさと観光公社では、地域DMOとして本市ならではの地域資源を活用した体験プログラムの整備や教育旅行の誘致などに取り組んでいるところです。
これまでの成果として、笠置へんろみちハイキングや佐田岬E−BIKEツアーなどの個人向け商品を10商品造成したほか、教育旅行の受皿として南予全体で最大100件、400人の受入れが可能な体験民泊を整備しました。
特に教育旅行については、今なお新型コロナの影響で営業活動が制限される中、本年度初めて広島県の中学校2校と東京都の高校1校の修学旅行を誘致することができ、観光公社にとって大きな一歩になったものと評価しています。
なお、地域の住民の地域への誇りと愛着を醸成することも地域DMOの役割とのお話がありましたが、公社では設立以降、市民グループや地域団体の方々の御協力をいただきながら、旅行商品や体験メニューづくりに取り組んでいます。その中で少しずつそうした土壌も育まれつつあると感じています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 産声を上げて3年間、地道な活動を積み重ね、ようやく基礎体力が身についたところだと感じております。
公社の旅行業務取扱実績によりますと、令和元年に個人旅行体験プログラムの販売からスタートし、令和3年から教育旅行商品ふるさと南予感動体験の団体受入れが始まり、コロナ禍にもかかわらず着実に販売実績は伸びています。
経済効果はまだまだ十分とは言えませんが、地域DMOとしての真価を発揮し始めています。
特に昨年秋から冬にかけて県外の中高校生が修学旅行で本市を訪れたことは画期的なことであり、地道なマーケティングの成果が現れています。
修学旅行は数多くの候補地の中から期待できる教育効果を比較して決定されますので、都市部の学校に選ばれたことは地域にとっても誇らしく、着地型観光の推進によるまちづくりが具現化しつつあると言えるのではないでしょうか。
昨年受け入れた修学旅行について、参加校の実施後評価、旅行業者からの評価、助言及び自己評価について、把握されている内容をお伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 副市長。
○副市長(菊池司郎君) ふるさと観光公社に確認しましたところ、今のところ本年度修学旅行を受け入れた3校やその旅行業者から具体的な評価や助言などは届いていないということでした。
しかしながら、同行した職員からは、教育旅行中の生徒や先生の表情、受入れ側である体験インストラクターの反応もよかったと聞いており、また旅行後に生徒が書いた感想文なども拝見しても、本市ならではの体験に感動し、十分に満足いただいたものと思っております。
そして、何よりありがたいことに、教育旅行を受け入れた学校のうち1校からは、早速来年度の仮予約をいただき、さらにその学校を担当した旅行業者から、他の学校の仮予約もいただいております。このこと自体が評価を表すものであり、この流れが今後も続くよう、ふるさと観光公社には大いに期待をしているところです。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 全体的に高評価であるということを伺い、一市民としてうれしく思います。
また、今後ミスマッチが起きないよう常に改善する姿勢は持ち続けていただきたい。
本市に縁もゆかりもない県外の中高生が舌田湾で釣りをしている、商店街を闊歩している、段々畑で農作業をしている、市民の居宅に宿泊している、このようなわくわくするシーンを目にする機会が今後さらに増えてくるものと期待しております。
体験型修学旅行やオンライン会議、ワーケーションなどの働き方の変化は、都市から地方への人の流れを加速させ、移住や観光にも大きな期待が持たれています。
愛媛県は、来年度予算に、魚釣りを売りとして都市部の会社員を南予に呼び込み、余暇を楽しみながら働くワーケーションの誘致やえひめ南予きずな博開催の予算を計上するなど、観光ビジネスチャンスは着実に拡大しつつあります。
このような状況下において、八幡浜の豊かな自然や地場産業、有形・無形文化財を積極的に活用し、観光を通じて地域活性化のかじ取り役を担う地域DMOとしてのふるさと観光公社の今後の業務展開について、業務委託内容を含めどのようにお考えなのか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 産業建設部長。
○産業建設部長(垣内千代紀君) ふるさと観光公社には、今後も引き続き本市ならではの多様な地域資源を活用した着地型観光の推進業務を委託する予定です。
業務内容を具体的に申しますと、コーディネート体制の整備、体験プログラムの整備、誘客に向けたプロモーション活動、旅行会社などの招聘、情報発信、調査研究などになります。
また、業務の実施に当たっては、関係機関と十分に連携し、一貫性や一体性のある取組を進めることとしています。
議員の御質問にもありました県が来年度から取り組む釣り具メーカーと連携した企業合宿型ワーケーションや、県と南予9市町で開催するえひめ南予きずな博においても既に関係者と連携を図っているところです。
ふるさと観光公社には、教育旅行の誘致をはじめ、今後も着地型観光の推進に取り組むことで、本市をはじめとする南予地域の持続可能な地域づくりに貢献してもらいたいと考えております。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 御答弁いただいた方向に歩みを進めるためには、地域住民の理解と協力が不可欠であり、ふるさと観光公社のコンセプト、目指すべきゴールを地域全体に浸透させ、共有する必要があろうかと考えております。
実際のところ、地域DMOとしての成果を上げつつあるにもかかわらず、市民の認知度はあまり高くありません。地域資源による交流体験を観光コンテンツの柱とするのであれば、多くの市民にその意義や取組を周知し、例えば修学旅行生がこの町に来るというようなわくわくする知らせを積極的に発信していただきたい。
ふるさと観光公社の認知度アップ、団体の同意を得た来訪情報提供など、市民に対する広報、プロモーションの強化についてお伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 産業建設部長。
○産業建設部長(垣内千代紀君) ふるさと観光公社では、主に市外の方を対象に地元の食や文化、農林漁業体験などの観光商品を提供する着地型観光に取り組んでいるため、これまで八幡浜市観光物産情報サイトやふるさと南予感動体験といったホームページによる情報発信に力を入れてきました。
しかしながら、議員御指摘のとおり、着地型観光の推進には地域住民の理解と協力が不可欠であり、特に取組を本格化するに当たっては、体験メニューなどのサービス提供者を増やしていかなければなりません。
そのためには、事業内容の紹介はもちろん、サービス提供者の具体的な役割や報酬面でのインセンティブ、さらに旅行者との交流を通じたやりがいを伝えることも大切です。
こうした意味でも、市民に対する広報、プロモーションの強化が必要であると考えています。
具体的には、「広報やわたはま」への定期的な記事の掲載や、市長をかこむ会における資料の拡充のほか、ふるさと観光公社の会員向けに毎月発行している公社通信をホームページで公表するなど、その内容、伝え方も含め効果的な広報ができるよう検討したいと思います。
なお、教育旅行の受入れなど大きな事業を実施する際は、これまで同様、八西CATVなど報道機関の御協力もいただきながら周知に努めていきたいと考えています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 「広報やわたはま」への記事の掲載をぜひお願いいたします。
広報するのは大変手間がかかり、専門性が求められる業務ですが、各部署の協力も得た上で地道に取り組んでいただきたい。
最後に、地域DMOとしてのふるさと観光公社の体制整備について、2点質問いたします。
現在は教育旅行の誘致、受入れが主でありますが、ポストコロナや3年後の大阪万博開催を契機とするインバウンド対応、個人旅行商品の販売など、その業務の拡大が推察されます。
教育旅行に限ってみても、受入れ件数は増加傾向にあり、設立当初の事務局2名体制のままで業務を円滑に遂行できるのか。また、事務局ツアーデスクは庁舎内4階、商工観光課内に設置されており、課内や他部署との連絡には適していますが、地域DMOとしての特色を生かし機能させるには、より市民や来訪者と接点を持てる場所、平成30年設立時の市議会協議会で議員の意見にもありました、みなと交流館のような施設や庁舎内の適所への設置が望ましいと考えます。
1点目の質問は、担当職員の増員、将来的には民間からの登用を含めた組織マネジメント、データ収集・分析、財務管理等の専門人材の配置について、2点目は、現在計画中の八幡浜港みらいプロジェクトや四国電力跡地プロジェクトにおいて、またそのほかの方法で事務局ツアーデスクの庁舎内外への移転設置を検討することについて、以上2点をお伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 産業建設部長。
○産業建設部長(垣内千代紀君) まず、1点目、担当職員の増員、専門人材の配置についてお答えします。
現在、教育旅行の受入れ対応などで人手が足りない場合は、商工観光課の職員が支援しており、当面はこれまで同様、市による人的サポートも必要だろうと思います。
ただし、独立採算による自主運営が本来の姿なので、専任職員の増員や専門人材の登用につきましては、まずは現体制の中で着実に実績を積み重ね、収益を上げながら安定的な経営に向けて一定の見通しがついた段階で検討すべきものと考えています。
次に、2点目、事務局ツアーデスクの移転設置についてお答えします。
ふるさと観光公社のツアーデスクは、議員のお話にもありましたように、現在は市役所八幡浜庁舎4階の商工観光課内に設置しています。
より市民や来訪者と接点を持てる場所に設置するのが望ましいとの御意見ですが、公社への問合せの多くは市外、県外の方や旅行業者からとなっております。これは公社が一般の旅行会社のような旅行者が出発地でツアーを選ぶ発地型観光ではなく、主に市外の方を対象に地元の食や文化、農林漁業体験などの観光商品を提供する着地型観光に取り組んでいるためです。
したがいまして、今のところツアーデスクの移転は考えておりませんが、今後の業務の状況によってスペースが手狭になるなどの支障が生じた場合には、そのときに改善できるように検討していきたいと思います。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 今後の事業規模の推移に合わせて将来的には考えていただくということで理解いたしました。
業務の継続性を担保するためには、特定の職員の専門性に依存し過ぎないよう、人材育成などの体制づくりも進めておくべきことを申し述べておきます。
私は、八幡浜市が先見の明をもって設立したふるさと観光公社に大きな魅力と可能性を感じています。今本市に必要なのは、市民が町の将来に明るい展望を持つこと、未来を諦めずに行動することであります。一過性に終わらず、市民参加の着地型観光の推進は必ずやその一助となると確信しております。
市民の理解と協力の下、官民挙げてふるさと観光公社を育て、移住者、観光客、ファンを増やして交流人口、関係人口の増加につながることを切望し、大綱1の質問を終わります。
大綱2、小学校における英語教育の現状、成果と課題について質問いたします。
小学校で学ぶ学習内容や科目編成を示した現行の学習指導要領は、令和2年4月から完全実施されています。
これにより、小学校における外国語、英語教育が必修化され、小・中・高と英語学習を10年間積み上げることになりました。
英語教育の内容を要約しますと、3・4年生は外国語活動として英語に親しむ学習スタイルで、年間35単位、週1時間程度の授業を行い、授業は原則として学級担任が担当します。5・6年生は教科外国語、英語として年間70単位、週2時間程度の授業を行い、他教科と同様に授業での活動や学力が評価され、通知表に成績が記載されます。授業は学級担任のほか専科教員、ALT外国語指導助手を積極的に活用し、話す、聞く、読む、書くという4技能を総合的に活用した英語力が身につくよう授業が展開されています。
教科ですので、検定教科書があります。私も先日一読しましたが、私が中1の頃学んだ内容がほぼ網羅されており、本当に2年早く英語を学び始めていることを実感いたしました。
英語教育が必修化され2年が経過しようとしています。この春小学校を卒業する現6年生は、教科として2年間英語を学んだ初めての学年でありますが、市内小学校の英語教育の現状、成果と課題をどのように評価されているか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 教育長。
○教育長(井上 靖君) まず、現状についてお答えします。
新しい学習指導要領が施行され、小学校では2年が経過しようとしています。3・4年生の外国語活動では、聞くこと、話すこと、つまり音声を中心としたコミュニケーション活動が学習の中心となっています。5・6年生の外国語科は教科となっており、教科書を使います。3・4年生の学びの上に、読むこと、書くことにも焦点が当たります。ALTと歌を歌ったりゲームをすることが中心だった授業から、デジタル教材を活用し、世界の英語圏の様子を知ったり、本物の英語に触れたりしながら、情報を聞き取ったり、自分のことについて人前で発表したり、実際のコミュニケーション活動の中で英語を学ぶ授業に変わってきています。
次に、成果として、現場からは、英語感覚が身についてきているという声が上がっておりますが、私自身、学校訪問をして感じることは、子供たちが意欲的に授業に参加し、積極的にコミュニケーションを図ろうとしているということです。この子供たちのやる気と英語に親しむ姿勢を大事にしていきたいなと思います。
最後に、課題というよりも、気をつけなければならないこととして、中学校1年生の内容が小学校に移行しているため、幾つかの内容について中学校では初めて習う事項として扱われないケースがあるということです。例えば、小学校ではリンゴ、Appleという単語を覚えるというよりも、リンゴという単語が出てくるんですけども、覚えるというよりも、まねて書くという学習になります。ところが、中学校では、新しく出てくる英単語にAppleは入っていません。したがって、中学校の教員は小学校で書けるようになっていると捉えてしまうおそれがあります。この点につきましては、本市が取り組んでおりますブロックごとの小・中の連携で補っていこうと考えています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 指導要領も導入されたばかりですが、着実に指導が進んでいることを伺い、安心いたしました。課題の解決も含め、より一層現場への支援をお願いいたします。
英語教育の必修化は、話す、聞くの言語活動を通してコミュニケーションを図る素地となる資質、能力を育成することにあります。現4年生は外国語活動として2年間、教科として2年間、計4年間を教育課程の中で学ぶ最初の学年であり、子供たちが成長して社会人として活躍するとき、英語によるコミュニケーションが一般化していることが期待されています。
私の知人にこの話をしたところ、今と大して変わらないのではとの回答が多くありました。私を含め学校関係者以外は英語教育に接する機会が少なく、正しい認識を持つのが困難なのかもしれません。そういう意味でも一般質問として取り上げた次第であります。
いずれにせよ、前述した目標を達成するためには、指導力のある教員による質の高い授業の実践が求められます。小学校においては、中高の外国語教員免許保有者が専科教員として授業を担当することが理想でありますが、人員確保等が容易でないことは想像できます。英語専科教員の配置、加配などの状況及び英語指導者の養成についてお伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 教育長。
○教育長(井上 靖君) 小・中学校の教員数は、その学校の学級数によって決まります。その上に特別な目的で配置される教員が加配教員です。
今年度本市では、小学校の外国語教育加配教員として、中学校の英語免許所有者を3校、江戸岡小、神山小、喜須来小に配置しており、学級担任からこの3名は外して3・4年生の外国語活動、5・6年生の外国の授業全てを担当しています。来年度はさらにそれを増やしていきたいと考えております。
外国語指導者の養成につきましては、県教育委員会が教員採用段階で、特に高い英語力を持った人材には加点をする取組を行っています。国の施策に沿って県が行う外国語指導力向上に関連する研修を教員が受講したり、TOEICや英語検定の受検を奨励することで教員の指導力向上を目指しています。
また、本市の研究推進におきましては、小・中合同で9つの教科の部会を組織していますが、その一つである外国語部会は、小・中合同で授業公開をし、研究・協議を通して指導力の向上に努めています。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 専科教員の状況について十分に理解いたしました。
加配についてもそうなんですけれども、来年度から一部の教科に教科担任制が導入されてきますので、英語専科教員の配置にも追い風が吹くのではないかと思われます。機を捉えた対応をお願いいたします。
来年度の中学校では、3年生は中学入学時に教科として英語を学び始め、2年生は小6から、1年生は小5からと、履修内容に差がある3世代が混在することになります。
ある中学校の英語の先生は、現1年生は以前1年間かけて学んだ内容を1学期でほぼ終了できたとおっしゃっていました。年度ごとに異なる履修歴の生徒を適切に指導していくためにも、新入生の英語力定着度を十分に把握する必要があろうかと思います。
中学校の英語学習は、高校進学や将来の進路設計に大きな影響を与えます。この春には小学校低・中学年から英語に親しみ、高学年で教科として英語を学んだ生徒が中学校に入学しますが、小・中学校の連携はどのように行っているのか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 教育長。
○教育長(井上 靖君) 本市では、中学校区ごとのブロック単位で小学校と中学校が協力して様々な活動を行っています。その活動の一つに、中学校英語科の教員が専門性を生かして小学生に外国語を教えるという取組があります。中学校教員と小学校教員が役割を分担し、協力し合いながら指導するチームティーチングという形態で授業を行います。
これにより、中学校教員にとっては小学校の指導内容や児童の様子を知ることができ、また小学校の教材や指導方法について深く考える機会になるというメリットが生まれています。
また、小学生にとっても、中学校の先生が授業に参加してくれるということで、中学校での生活への意欲や外国語学習の見通しを持てる貴重な機会となっています。
さらに、先ほどの答弁で御紹介した小・中合同の外国語部会では、今年度小学校に中学校の教科書を、中学校に小学校の教科書を配付し、小・中それぞれの到達目標や学習内容を互いに把握し合いながら日頃の教科指導に生かしています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 英語教育での小・中学校の連携がかなり深くなっていることを知りました。
英語教育の充実のためには、さらにネーティブとしてのALTによる指導は必須であります。言語を学ぶだけでなく、国際社会に生きることを実感させる目的もあります。
現在ALT3名は、八代中、保内中、愛宕中と松柏中をセットとした3校をベーススクールとして小・中学校を訪問指導しています。
愛宕中、松柏中は学級数が少ないという事情で年替わりとなっていますが、ALT1名増員により中学校4校全てをベーススクールとして所属籍も置き、それぞれに小学校を連携させて指導校をまとめる体制がより効率・効果的だと考えます。
中学校の授業は原則オールイングリッシュで行われ、実用英検をはじめ各種の英語検定を受検する生徒も増えてきています。増員によって授業や放課後等にもALTの指導機会を確保できるというメリットを重視すべきではないでしょうか。教育委員会としてALTの現在の人数、配置で十分と考えておられるのか、また増員について検討されておられるのか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 教育長。
○教育長(井上 靖君) 3名で十分とは考えておりません。中学校にALTが常駐することにより、外国語が生徒のコミュニケーション手段としての広がりや深まりにつながっていくことが期待できます。
また、それはALTと触れ合うことにより自国のよさを見詰めたり、異文化や多様性を理解したりする機会を増やすことにもつながると考えます。
小学校におきましても、低学年と高学年で月にそれぞれ1回ずつの訪問という頻度ですので、もう少し増やしたほうが子供たちにとっても教員にとっても有効であると考えます。
申請等、手続上のこともありますので、すぐに増員というわけにはいきませんが、増員の方向で検討していきたいと思います。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 増員についてぜひとも前向きにお願いいたします。
参考までに南予地域のALTの人数を示します。宇和島市、大洲市6名、西予市5名、伊方町5名、内子町4名、鬼北町、愛南町、八幡浜市3名、松野町2名であります。学校数の違いもあり、ALTの人数イコール英語教育の充実度ではないことは承知しています。自治体それぞれの考えによるこの状況は参考になるものかと思います。
増員が必要か否かは、今教育長のお話もありましたけども、教育現場の意見も聞きつつ、教育効果を十分に検討された上で御判断をいただきたいと思います。
グローバル化への対応として始まった英語教育の必修化でありますが、1つ懸念があります。英語が教科として評価されることになり、低学年から英会話スクールに通う子供が増えたという話を耳にします。
意欲的な姿勢は歓迎すべきことですが、児童、保護者の英語学習に対する関心度の差により、低学年から児童間の英語力の差が拡大し、中学校入学時には同質の授業実施が困難になるかもしれないと懸念しております。
授業以外でも学びたいけど学べない事情のある児童に対する教育機会の確保や、早々と苦手意識を持って英語嫌いになる児童の指導など、新たな教育的ニーズの発生を予見し、その対応についても考えておく必要を感じております。
実際にこのような状況が起こっているのか、また将来起こり得るのか、その場合の対応についてどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
○議長(平家恭治君) 教育長。
○教育長(井上 靖君) お答えします。
小学校に新しい学習指導要領が導入された令和元年度に、何らかの習い事をしている児童の割合は約72%でした。翌令和2年度もほぼ同じ割合でした。そのうち学習塾に通っている児童は16ないし17%となります。
また、英語または英会話の塾に通っている児童は、令和元年度で約12%、令和2年度は約13%ですから、若干増える傾向があるかもしれません。
ただ、通塾によって学力差が生まれるかどうかについては、外国語科に限ったことではなく、どの教科でも考えられることです。
また、学習塾に通うことが子供の学力の高さと即結びつくかというと、必ずしもそうとも言えません。
現場の教員は、通塾も含めて一人一人の児童・生徒の実態を把握し、様々な方法で学力の定着に取り組むとともに、外国語においては英語になれ親しみ、英語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を育てることに重きを置いて指導しています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 子供たちの実態を踏まえた丁寧な指導が行われていると思いますので、私の取り越し苦労であればよいと思っております。
英語教育必修化は、何年学校で勉強しても英語コミュニケーションが不得手という世の中を変えられるのか、国際的視野を広げられるのか。学校は、子供たちは、保護者は、学習指導要領の示す方向に向かって英語学習に取り組んでいくのですから、教育行政は英語必修化が子供たちにとって、また地域にとってよりよい未来を開くことにつながるよう、先頭に立って導いていく責務があることを申し述べ、大綱2の質問を終わります。
私の一般質問は以上であります。