公開日 2023年09月06日
〔田中繁則君質問席へ移動〕
○田中繁則君 それでは、通告書に従いまして大綱2点を質問いたします。
令和3年9月、私は議員として初めてこの場に立ち、地域を担う人材育成のための奨学金の創設について質問いたしました。
社会人になったばかりの若者が抱える奨学金返済負担は、結婚や出生数減少の一要因となるなど、大きな社会問題となっています。
政府は、少子化問題を最重要課題として取り組む方針を示し、今後六、七年がラストチャンスと捉え、従来とは「次元の異なる少子化対策」として給付型奨学金の対象拡大を含め、多種多様な政策が検討されています。
前回の質問から約1年半が経過し、本市においても人口減少問題がますます重きを増す中で、就学支援事業の柱となる奨学金制度をその解決の一助として活用していくことについて、改めて質問する次第であります。
最初に、八幡浜市奨学資金、八幡浜市入学資金、西村奨学資金の運用状況をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 学校教育課長。
○学校教育課長(梶本教仁君) お答えします。
今年度の八幡浜市奨学資金貸付事業の貸与者は1名です。
貸付開始年度別の内訳は、令和元年度1名、令和2年度3名、令和3年度と令和4年度はゼロ、令和5年度1名です。
校種別では、高等学校3名、短期大学1名、専修学校1名、貸与額は月額で高等学校が1万2,000円、短期大学・専修学校が3万5,000円です。
西村奨学資金の対象は、大学生で特に優秀な者1名に貸し付けるもので、現在利用者はおりません。貸与額は、月額で4万5,000円です。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 今ほど詳細に説明いただきましたが、これらの奨学金は本市の育英事業において確かに大きな功績がありました。
しかしながら、その利用状況を伺うと、就学支援としての機能は十分に発揮されているとは言い難く、より利用が進むよう手を入れる必要性を感じています。
八幡浜市奨学資金貸付条例(第3条)には、「八幡浜市奨学資金は予算の範囲内で貸付けを行い、八幡浜市西村奨学資金は八幡浜市西村奨学基金を、八幡浜市入学資金は八幡浜市奨学基金をそれぞれ財源に充てる」とあります。
令和3年度決算によると、八幡浜奨学資金は一般会計教育費として393万6,000円が予算計上されていますが、返済額が支給額を上回る黒字となっています。
また、八幡浜市奨学基金の年度末現在高は約7,920万円、西村奨学基金は約1,620万円、合計1億円近くの金額が留保されています。
貸与型奨学金制度の仕組みとして、受給者が返済拒否あるいは返済不能にならない限り資金は目減りせず、市の実質的な負担はほぼゼロになります。
日本学生支援機構が令和2年度に全国約9万人の学生を対象として行った学生生活調査によりますと、奨学金受給者の割合は、短期大学生56.9%、大学生49.6%と、高い率を示しています。
世帯年収400万円以上600万円未満では83.9%が利用しており、中所得層においても高い需要があります。
この春、市内3高校を卒業して進学した生徒たちも同様の状況であります。
以上のように、奨学金の需要が高いにもかかわらず本市奨学金の利用が低調な理由をどのように考えられているのか、所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 学校教育課長。
○学校教育課長(梶本教仁君) お答えいたします。
奨学資金の利用者は、先ほどお答えしたとおりで、以前に比べて減少傾向です。
理由としては、給付型奨学金が多くなったことが考えられます。
平成29年度に創設された、国が経済的に困難な学生などを支援する返済義務のない給付型の奨学金制度の申請は、4月下旬から申請開始、進学先が決まっていなくても予約採用で申込みができるなど、奨学金を検討している場合には早めの情報収集ができ、自分に合った奨学金を見つけやすくなっていることなども考えられます。
本市の奨学金は、11月下旬に募集要項を中学校・高校に送付して、1月末を申請締切り、2月中旬に選考委員会を開催して採用・不採用を決定しています。他の奨学金と比べて申請時期が遅く、出遅れているため、募集時期を早めることや直接高校へ出向いて説明会を開くなど、検討する必要があると考えています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 教育委員会でも現状の課題は十分に認識されていることが分かりました。
また、最後に検討という言葉がありましたけれども、ぜひ利用者目線で再考をいただきたいと思います。
前述した調査によりますと、給付型受給者が10.2%、貸与型が38.9%、さらに貸与型38.9%のうち17%が無利子、21.9%が有利子であります。有利子貸与がこれほど多い現状でありながら、無利子である本市奨学金利用が進まないのは、答弁にありましたように、受給資格や金額等の諸条件がニーズと合致してない、あるいはその認知度が低いからと推察いたします。
令和2年、国によって高等教育修学支援新制度が導入され、授業料減免や給付型奨学金によって経済的に修学が困難な学生に対する支援が大幅に強化されました。
さらに、今また給付対象者の拡大が検討されています。
このような情勢を踏まえると、経済的事情で修学が困難な学生への支援は、ある程度国や県の政策に負託し、市の奨学金は経済的困難者への支援も残しつつ、世帯収に左右されない受給者本人の目的意識や能力を選考基準とすることも検討すべきと考えます。
「他の奨学金との併用を認めない」現行奨学金制度の維持を前提とした場合、八幡浜市奨学資金は現在の6段階区分及び支給額を見直し、高校在学者への支給分を給付型へ転換するなどの内容変更を、また全奨学金共通の「経済的事情により就学が困難」という受給資格を一部緩和することを検討すべきと考えますが、所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 副市長。
○副市長(菊池司郎君) 八幡浜市奨学資金貸付利用の資格は、1つ目は学校教育法に規定する高等学校、高等専門学校、大学、短期大学及び専修学校に在学する者であること、2つ目に保護者が八幡浜市に居住する者であること、3つ目に学業面、人物面、健康状態において就学に十分耐え得ると認められる者であること、4つ目に経済的事情により就学が困難な者であること、5つ目にほかに同種の奨学金を受けていないこととあります。
特にこの5つ目の「ほかに同種の奨学金を受けていないこと」につきましては、国すなわち日本学生支援機構ですけれども、給付型奨学金と併せて貸与型奨学金を借りることを可能としていることから、今後は奨学金の利用を促進するために、支給条件の緩和について具体的に検討したいと考えております。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 先ほどの質問にも述べました「経済的事情」に関しては今のところ考えはないということでよろしいでしょうか。
○議長(平家恭治君) 副市長。
○副市長(菊池司郎君) 経済的事情と申しますのも、今申し上げましたように、2つを借りることができましたら、その分支援になるのかなと考えております。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 ただいまの答弁内容をぜひとも改善につなげていただきたいと思います。
ただ、今私の質問は、最低限やるべきことではないかという問いかけであり、受給者のニーズを考えた場合、抜本的な見直しは避けて通れないように思います。
令和3年11月発行、教育委員会事務事業点検評価結果報告書、そのうち「重点施策4 教育環境条件の整備充実」の項目において、事務事業点検評価委員の意見として、育英事業について次のように述べられています。
「家庭の経済格差がますます大きくなっている現状を踏まえて、奨学金をふるさと納税の生かし方の一方策としたり、奨学金制度を貸与型から給付型に転換したりするなど、抜本的に再構築を検討するよい機会ではないだろうか」であります。大変的を射た指摘であります。
ふるさと納税寄附金の活用には「教育」も掲げられており、令和3年実績で約2億5,000万円が充てられています。この一部を奨学資金として活用し、育英事業としてだけでなく、若者定住・地方創生にもつなげれば、その趣旨を最大限に生かすことになるのではないでしょうか。
先ほどの事務事業点検評価委員の意見に対する教育委員会の自己評価は次のとおりであります。
「国による教育費の支援の拡充に伴い、貸与型奨学金の新規貸付を停止する県内自治体もある。本市においても、貸与型奨学金制度のあり方について、今後の情勢や他市町の状況を注視しながら、見直しや奨学金返還支援事業についても検討していきたい」でありました。
同令和4年発行版によっても、「奨学金制度については、新たなステージの支援を検討する必要性を感じる」との自評でありました。
この自己評価以降、見直しや新事業の立ち上げの協議・検討はどの程度進んでいるのか、お伺いします。
○議長(平家恭治君) 学校教育課長。
○学校教育課長(梶本教仁君) それでは、お答えいたします。
令和4年11月の八幡浜市教育委員会事業点検評価委員の意見でも、「高等教育以上の進学費用の捻出という点で生活基盤の影響は明らかであるが、経済的理由により、修学の道が閉ざされることのないよう、今後も、子どもの貧困対策に取り組み、切れ目なく必要な支援を推進していただきたい」との意見でありました。
学校教育課としては、奨学金制度については新たなステージの支援を検討する必要を感じており、貧困の連鎖を断ち切れるような支援を、近隣市町の状況を見定めつつ、他部署とも連携して検討していきたいと考えています。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 事業点検評価、それを将来生かすためにあると私は思います。有言実行は施策策定の基本姿勢であると思います。今後の取組を注視しておりますので、自己評価に沿った対応をぜひ実践していただきたいと思います。
奨学金問題の本質は、教育ローンとも言える貸与型が中心であること、保護者など本人以外の意思が重視されること、将来の返済能力が予測できないことにあります。にもかかわらず救済制度は整っていません。
そこで、救済と地方創生の観点から、政府は「奨学金返還支援事業」の創設を強く推奨しています。これは、貸与された奨学金の返済について、大学等を卒業後に一定地域に定住、就労するなどの条件を満たせば、その一部または全額の返済を自治体が支援するものであり、地域にとっては若者の定住促進、企業にとっては人材確保、学生にとっては債務軽減による安定した生活に寄与するものであります。
他市町の状況を注視しながらという教育委員会の自評がありましたので、宇和島市を例に挙げますと、一人当たり毎年上限20万円を5年間、最大100万円を補助しています。企画情報課所管の若者定住支援の中に組み込まれており、令和5年度は前年度より大幅に増額し、700万円が予算計上されています。平成28年度に創設以降、7年間で申請者149名、利用者59名、令和4年度に限ると9名が新規に利用されています。窓口である教育総務課では、この事業は定住支援政策の中での位置づけが高く、成功例であると自評されています。
令和4年4月、総務省「奨学金を活用した若者の地方定着推進要綱」一部改正により、特別交付税が措置率0.5に引き上げられ、自治体独自の返還支援事業も対象になることが明記されました。
さらに、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議からも、「本制度未導入の地方公共団体は導入に向けた積極的な検討をお願いする」との通知が出されるなど、事業開始の機運は熟しています。
市立八幡浜総合病院において、令和6年度から薬剤師に係る奨学金返済支援助成事業が実施されるなど、参考事例も多く、制度の設計・構築は比較的容易であると考えます。
奨学金返還支援事業の創設が進まない具体的な課題や障壁は何であるのか、また創設の計画はあるのか、お伺いします。
○議長(平家恭治君) 市長。
○市長(大城一郎君) 令和4年6月1日現在で奨学金返還支援に取り組んでいる自治体は36都府県615市区町村となっており、それ以降も取組を開始する自治体が増えてきています。
県内でも、条件や上限額など相違ありますが、先ほど田中議員が紹介されたとおり、愛媛県のほか宇和島市、新居浜市、大洲市、上島町、伊方町、愛南町が奨学金返還の支援を実施しております。
当市で制度を導入していないことについて、具体的な課題や障壁ということではありませんが、奨学生のみが支援を受けるという公平性の面、また支援期間終了後にすぐに転出して定住につながらないのではないかといったような懸念もあり、慎重な考えを持っていたことは否めません。
御質問にあるとおり、政府は奨学金支援事業の創設を強く推奨しており、特別交付税措置など財政支援もありますので、当市としても今後、移住・定住施策の一つとして制度の導入、これを前向きに検討したいと考えております。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 私の今回の質問の意図を十分にかみ砕いていただいてありがとうございます。
私自身も率先して取り組むべきではないかとこの事業に関しては思っておりますし、もし将来的に実施される場合に、先ほど宇和島市の例を挙げましたけども、伊方町の場合には全額を支援しておりますので、その辺の兼ね合いも含めてぜひ検討をよろしくお願いいたします。
返済支援事業の実施について、もう一つ検討いただきたいことがあります。
日本学生支援機構奨学金に限りますが、企業が自社の新入社員が抱える奨学金の返還を肩代わりする「代理返還制度」であります。
学生支援機構に代理返還の登録を行うと、機構のホームページ上に企業名と支援内容が公開され、同時に大学にも紹介されるなど、これを積極的にPRすることで社員の募集・採用の強化につながることもできます。
さらに、給与としての損金算入、税額控除等も認められるなど、企業にとって大変メリットの多い制度であります。
代理返還制度は、行政が費用を負担することなく、企業の協力によって地域産業の振興や若者定住の推進が期待できます。市として、市内企業に対して積極的な導入を検討されるよう働きかけることについて所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 産業建設部長。
○産業建設部長(垣内千代紀君) 代理返還制度は、事業者の負担は大きいものの、人手不足が深刻化している中、議員御指摘のとおり、損金算入ができることや雇用の確保につながることなどメリットもありますので、商工会議所や商工会と連携して市内事業者に制度の内容を周知するとともに、市や商工会議所、市内の主要企業で組織する八幡浜地区雇用促進協議会でも議題として取り上げてもらうよう、事務局の商工会議所へ働きかけてみたいと思います。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 大変心強く思います。
ただ、可能でありましたら、情報提供にとどまらず、申請をサポートするなど、制度の導入の機運を高めていただきたいと思います。
最後に、利用者にとって最も魅力があり強力な修学支援となる「給付型奨学金」であります。
既に市立八幡浜総合病院で運用している看護師等修学資金貸与事業のように、貸与の形を取りながら修学を支援する方法は、家庭の経済状況に関係なく、将来の市内定住、就労などの条件を満たせば返済免除の給付とし、満たさなければ無利子返済することで受給者の進路を拘束することもありません。
受給者は進学した時点で卒業後の進路の方向性がある程度定まり、将来の地元回帰、定住が期待できます。
現行制度の中に「地方創生枠」として給付型を組み込めば、条例改正で対応できます。
仮に採用者を毎年5名、給付額月5万円、平均支給年数4年とすると、初年度から300万円ずつ積み上げ、開始4年目からは年間総支給額1,200万円を予算計上する必要があります。
一旦始めると最低でも10年程度は継続すべきであり、財源の確保と併せ地方創生に資するための条件設定を十分に検討しなければなりません。
以前、この場で鹿児島県長島町の「ぶり奨学金」を一例として紹介しました。将来は地元に回帰して活躍したいと希望する若者に対し、給付型奨学金によって修学支援を強化することについて所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 総務企画部長。
○総務企画部長(藤堂耕治君) お答えします。
給付型の奨学金につきましては、議員が言われるように、事業の実施に当たりまして条件設定と財源の確保が大きな課題となります。
また、利用する学生にとっては、返済さえすれば進路を拘束するものではないとはいうものの、受給の段階で地元へのUターンを強く意識せざるを得ません。
医師や看護師などの特定の資格職を除けば、若い入学の段階で就職先を地元に限ってしまい、将来的に様々な職種で広い視野で活躍できる可能性をあらかじめ制限してしまうことは、検討すべき余地があるのではないかと思います。
大学等卒業後の選択の自由度の高さや、また条件次第ではUターン以外の移住者にも適用ができることから、当市としましては、現時点では給付型奨学金制度ではなく、先ほど市長から答弁がありましたように、まずは返還支援事業の創設について検討をしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 奨学金制度の再構築について、3つの視点から質問してまいりました。
奨学金のような地道な事業も、今後丁寧に査定し、奨学金の機能強化を図っていただきたいと思います。
地域の未来を担い、その存続・活性化に貢献するという強い意志を持った若者の育成・定住のため、本市にとってどのような仕組みづくりが必要なのかを再考していただくことが質問の意図であります。
学校関係者や市民が注視する中で、どのような方法でどのくらいの資金を投じていくのか、市としての課題認識の程度が問われます。
特別交付税措置、ふるさと納税、企業の協力、若者定住による税収増等、総合的に財源を確保することは、行政の手腕を発揮されるところであります。
さらに、2つの基金の取扱いや関連条例の制定・改正、現利用者への対応等、解決すべき課題は数多いですが、利用されない制度ではなく、利用しがいのある制度へと変わっていかねばなりません。
市内3高校が1校に統合される令和8年度までには、思慮深く大胆な見直しが行われ、奨学金による若者支援宣言が市の広報紙の一面に堂々と掲載されることを期待し、大綱1の質問を終わります。
続きまして、大綱2「市職員の募集・採用及び選考について」。
3月定例会一般質問におきまして同僚議員から技術系職員採用についての質問があり、副市長の答弁において、職員採用試験全般について、試験実施日の前倒し、教養試験の廃止、年齢要件の引下げ、さらには民間の就活システム利用を取り入れるなど、積極的に改善に取り組む姿勢が示されました。
5月19日、令和5年度八幡浜市職員募集要項が公開されましたが、過年度から変更された箇所があれば、その理由も併せてお伺いします。
○議長(平家恭治君) 総務企画部長。
○総務企画部長(藤堂耕治君) お答えします。
職員募集要項につきましては、愛媛県や県内自治体の状況、近年の応募状況など、様々な情報を基に必要に応じて改善するなど、柔軟に対応をしてきております。
なお、具体的な変更点につきましては、土木技術職の確保が困難な状況を踏まえ、令和3年度に短大・専門学校新卒者の受験ができるよう、年齢要件を二十歳まで引き下げました。
また、土木技術職について、今年度はこれまでの教養試験だけでなく、専門試験も取りやめ、SPI試験に変更。このSPI試験は、学歴や職歴などの表面的な情報だけでなく、応募者の能力や人となりを客観的に把握することのできるもので、今では9割以上の企業が新卒採用で活用していると言われているものですが、このSPI試験とすることで、基本的に公務員試験対策を不要とし、受験に対する心理的ハードルを下げ、受験者の確保に努めているところでございます。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 募集・採用について改善が進んでいることが分かります。
ならば、さらにこの取組をもう一歩進めていただきたく、次の質問をいたします。
職員採用に関して以前から私の持つ疑問は、一般事務職に高校新卒者が応募できないことであります。高校卒業または見込みもしくは高校卒業程度の学力保有者を対象とする試験は、一般に初級区分と呼ばれ、若者の地元就職先の確保、実践的な知識やスキルを持つ若手職員の育成、多様な人材の募集などの目的によって設けられます。
本市の応募資格は、一般事務職は22歳から33歳まで、学歴は問わず、22歳以上なら高卒・短大卒も応募できますが、筆記試験は大学卒程度の内容であります。
県内において高校卒業見込み者も対象とする一般事務職初級試験を実施しているのは、新居浜、西条、松山、宇和島の4市、久万高原、伊方、鬼北、松野、愛南の5町であります。
国家・愛媛県でも初級採用枠が設けられているにもかかわらず、高校新卒者の採用には、町は積極的で市は消極的な印象を受けます。
一般事務職採用において、高校新卒者の募集を取りやめた経緯と、その後、応募資格の年齢引下げ議論があったかどうか、さらに現在に至るまで初級枠年齢引下げを行っていない理由をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 総務課長。
○総務課長(宇都宮久昭君) お答えします。
一般事務職における高校新卒者は、旧保内町との合併前の旧八幡浜市で平成15年4月に1名を採用して以降、今年度まで採用していません。
募集を取りやめた経緯としては、合併を見据えて新規採用者数を抑制したほか、合併後においても10年程度は採用抑制を継続して職員数の適正化を図る必要があったためです。
また、採用抑制がある程度落ち着いた現在でも、高校新卒者の採用枠を設けていない理由としては、高校卒業後の進学割合の増加と就職割合の減少、少子化による生徒数の減少や定員割れ等で地元高校の新卒就職者が以前よりもかなり少なくなっていることなどが挙げられます。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 取りやめた経緯については、今の説明で十分に把握することができました。
ただ、現在でも採用枠を設けてない理由については、やや不可解な思いをいたします。
就職希望の高校生にとって、公務員は憧れであります。行政事務はもとより、警察官・消防官等の専門職も人気があります。
私は、大綱1で高等教育進学者を支援する奨学金の充実を提言しましたが、高卒で社会人となる若者たちに、私自身も含めしっかりと目を向けるべきであり、地域の構成員として、また産業の担い手としての社会的評価はもっと高くあるべきだと思っています。
現在の年齢制限によって、地元志向が強い公務員志望の市内在住高校生が、やむを得ず近隣自治体を受験・就職せざるを得なかった実例を数多く見聞きしてまいりました。最近もその例があります。
学校現場からは、「地元に貢献する意欲と能力のある高校年代の若者に門戸を広げてほしい」との要望も耳にします。
社会人としての未熟な面があっても、潜在能力を秘めた若き力を組織の中で生かし、人材の多様性や適材適所の人員配置をより進めていくためにも、一般事務職初級枠を設けることで、市から高卒世代の若者たちに地域の未来を担う人材として期待するメッセージを発信すべきと考えます。
今後、一般事務職試験区分に高校卒業程度(初級)を設けることについて、所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 総務課長。
○総務課長(宇都宮久昭君) お答えします。
今年度の職員採用に関しては、初級枠を追加で設ける予定はありませんが、昨年及び一昨年の一般事務職の採用では、採用試験合格者の辞退や早期退職者が発生したことによる欠員を補充するため、一般事務職の追加募集を実施するなど、人材確保に苦慮したことも事実です。
しかしながら、大学生と高校生では就職活動の方法が大きく異なると思いますので、まずは地元高校に市役所志望の生徒の状況や高校生の就職の内定時期等について調査した上で検討したいと思います。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 高校含めてぜひ現場の意見を聞いていただいたらと思います。
年齢要件を引き下げた場合に、例えば試験としてSPI-Nを導入すれば、高校新卒はもとより、短大・専門学校卒年齢での受験も可能になります。幅広く人材確保を図る観点からも、柔軟な発想を求めたいと思います。
年齢要件の引下げについてもう一点、冒頭に触れました副市長の答弁では、土木技術職についてはいまだ必要な人員は確保できていないとのことでした。
年齢要件を大きく引き上げ、教養専門試験を廃止して社会人としての基礎能力や人となりを把握するSPIに切り替えるなど、応募者増を狙った改善が行われていますが、これをもう一歩推し進めて、年齢要件の下限を20歳から高校新卒年齢まで引き下げることを検討していただきたい。市として技術職に専門知識・技能を有した即戦力を求めるのは当然でありますが、地元には機械土木工学科・電気技術科を有した教育機関があり、技術者の育成に熱心に取り組んでいます。
その不足が叫ばれる中、この地域資源を有効活用しない手はありません。生徒にとっても、卒業後に市職員として活躍できる道が開かれるとするならば、工業科で学ぶ大きな励みにもなります。
令和8年度の市内3高校統合に向けて、統合校の教育課程編成作業が開始されつつあります。市として地元での技術者育成につながるよう、土木コースの存続を準備委員会に働きかけるなど、長期的・俯瞰的視野を持った採用活動が展開されることを期待いたします。
土木等技術職の応募資格を、高校卒年齢まで引き下げることについて、所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 副市長。
○副市長(菊池司郎君) 先ほど御説明しましたとおり、土木技術職については、人材確保を図るため、専門試験の廃止や対象年齢の拡大など応募要件を緩和したほか、今年度は募集時期を前倒して5月に1次試験を実施しましたが、3名程度の募集に対して応募者は1名であったため、引き続き2名程度を募集して、大学訪問等の広報活動に努めているところです。
土木技術職は、官公庁に限らず民間企業においても人員不足であり、待遇面で比較した場合、初任給など給与水準の高い民間企業に流れやすい傾向にあり、今後も厳しい状況が続くことが予想されます。
これからも大卒者・高専卒者の応募が少ない状況が続けば、高卒新卒者の受験が可能となるよう、初級区分での採用も含めて検討しなければならないと考えておりますが、いずれにしても必要な人材確保のためには、あらゆる選択肢を排除しないで検討していきたいと考えております。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 私の質問が年齢引下げなんですけれども、それを考えていくということで理解してよろしいでしょうか。
多分、高校生卒に対しての採用が進まないのは専門性等があるかと思います。私も八幡浜工業の現在の教育内容、また検定資格等、調べてみたんですけども、私が思った以上かなり高いレベルの授業が行われています。
さらに、学校要覧の教育目標の中で、土木コースの教育目標に次のように書かれております。
「道路、橋梁、ダムなどの土木構造物の施工に関する知識・技術に関する基礎を学習し、卒業後は、官公庁や建設会社、測量事務所などで、土木工事に従事できる技術者を養成します」とあります。ぜひ積極的な検討をお願いいたします。
私は大綱2を質問するにあたり、県内全市町の採用情報を得るべく、それぞれの公式ホームページを検索・閲覧いたしました。
公務員志望者は早くから各自治体の募集・採用サイトで情報を収集・分析して出願を準備しますので、その時点で志願者の選択リストに載っておくよう訴求力の高い広報活動が展開されています。
具体的には、早期特別枠などの複合的な試験日程、多彩な試験内容、過年度採用実績等の採用情報の詳細な提供、職場で働くイメージを持てるパンフレット、勧誘のための動画配信、インターネットによるエントリー、遠隔地受験システムなど、完全売手市場である就職戦線に挑む気概を持って募集・採用戦略に取り組まれています。
本市の職員募集・採用に関する広報活動には改善の余地があるように思います。その強化も含めた今後の職員募集・採用戦略の在り方について所見をお伺いします。
○議長(平家恭治君) 総務課長。
○総務課長(宇都宮久昭君) お答えします。
現在の就職活動は、団塊世代の退職にコロナ禍からの景気回復も相まって、学生優位の売手市場が加速し、採用に苦戦する企業が増加しています。
本市においても、職員募集・採用戦略を見直して優秀な人材の確保につなげることは重要な課題であり、今年度からは大手民間業者リクルートのシステムを導入し、就活サイト「リクナビ」を経由した学生へのアプローチやエントリー受付など、適宜改善を図っているところです。
このような新たな取組と併せて、引き続き愛媛大学・松山大学などへの訪問、分かりやすいホームページの掲載など、地道な取組も継続して行うことで応募者が増えるよう努めてまいりたいと思います。
以上です。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 地道で構いませんので、ぜひ継続した取組をお願いします。
特に情報発信につきましては、応募者目線で考えることを徹底していただきたいと思います。
最後に、採用内定後の内定辞退や早期離職の防止についてであります。
昨今、国・県・市町村を問わず公務員の早期離職率が高止まりしており、令和3年度総務省「地方公務員の退職状況等調査」によると、地方公務員全職種において25歳未満の普通退職者は13.5%、25~30歳未満は26.4%と、10代20代で約40%が退職しています。
これが本市に当てはまるわけではありませんが、公務員試験受験者の中には、合格が目的となって職務への関心が高まらないまま採用されたり、事前に持つイメージと実際の仕事との乖離に意欲を失って早期退職に至ったりする傾向があるとの分析があります。
本市の採用プロセスにおいて内定辞退や早期離職を防止し、新入職員の満足度や定着率を向上させるためにどのような方策を実践されているのか、「選考試験」「職務とのマッチング」「職場のサポート体制」「長期的なキャリア開発」以上4点についてお伺いします。
○議長(平家恭治君) 総務企画部長。
○総務企画部長(藤堂耕治君) お答えします。
まず、内定辞退の防止についてですが、通常八幡浜市役所の職員採用試験を受験する新卒者は、愛媛県庁や松山市役所も併願するケースが多く、毎年合格を通知した者のうち、数名から辞退の連絡を受けております。
また、最近では、警察や税務署など、自治体以外の公務部門と併願する受験者も見受けられることから、今後につきましては、合格通知を出した者に対して八幡浜市役所の特色でもある風通しのよい職場の雰囲気など、丁寧な説明と気持ちの伝わる対応を心がけ、内定辞退の防止につなげてまいりたいと考えております。
次に、早期離職の防止につきましては、御質問のあった順番にお答えをしたいと思いますが、1つ目、選考試験については、作文や面接試験など人物重視の選考を行ってまいりたいと思っております。
2つ目、職務とのマッチングにつきましては、本人の特性等を考慮した配属と定期的な人事異動に努めてまいりたいと思います。
3つ目、職場のサポート体制につきましては、所属長との面談や年代の近い職員間での相談体制の充実を図ってまいりたいと思っております。
4つ目、長期的なキャリア開発につきましては、若手職員対象の研修会などを充実をしてまいりたいというふうに考えております。
このような様々な取組を行うことで早期離職の防止と人材育成につなげていきたいと考えております。
以上でございます。
○議長(平家恭治君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 ただいまいただいた答弁の内容が、新入職員を含めた全職員に共有されることが重要だと思います。
今後、この方策の見える化を一層進め、成果が上がることを期待しております。
質問は以上でありますが、この春、本市においても活気と情熱にあふれる新進気鋭の若手職員が公務員としてのキャリアをスタートさせています。職員採用試験は、その情熱・意欲・能力をよりよいまちづくりにつなげる第一歩であります。そこでのミスマッチを防げるよう、インターンシップによる職場理解や多様な人材確保を目指すSPI試験の導入、複眼的な評価による人物重視の徹底など、採用プロセスの改善と同時に、早期の課題発見や幅広い年齢層の採用など、適切な人員配置の柔軟性を持つことも必要であることを申し上げ、一般質問を終わります。