公開日 2025年12月09日
〔田中繁則君質問席へ移動〕
○田中繁則君 通告書に従いまして、大綱1「情報保障の充実と手話施策の体系的推進について」質問いたします。
まず申し上げたいのは、これは限られた一部の人のための政策ではなく、誰もが言葉を交わし、意思を伝え合い、情報を取得できることは、全ての市民にとっての基本的な権利であり、地域社会の土台となることであります。
にもかかわらず、耳が聞こえない、あるいは聞こえづらいというだけで届かなかった情報、伝わらなかった意思、共有されなかった気持ちが日々積み重ねざるを得ない現実があります。
本年2月、八幡浜市人権・同和教育研究大会第3分科会では、手話サークル「あゆみの会」の皆さんが、聴覚障害者に対する情報保障について、地域での活動や困り事、そして願いを率直に語ってくださいました。
その中で、災害時の情報伝達への不安、手話通訳者養成が不十分なための支援の不足等を上げられましたが、それらは単なる配慮不足ではなく、構造的課題であると私は考えます。
この課題解決の一つとして、手話を言語として認め政策を展開していく手話言語条例は、全国では既に約600の自治体が制定し、地域の実情に即した制度整備が進んでいます。
一方で、愛媛県は、本市のみならず県も含めていまだに一つも制定自治体がない全国唯一の条例空白県として放置された状態であります。
障害者の情報保障に関しては、2022年5月「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が施行され、障害者自らが選択する手話などの言語やコミュニケーション手段を使って平等に生活できる社会の実現を目指し、自治体にも障害者の情報取得や利用手段について選択の機会を保障する法的責務が生じました。
こうした中で、本市として何が足りず、何ができるのか、誰一人取り残さない情報・言語保障のまちづくりに向け、条例によってその理念を明記し、具体的な施策を体系的に推進することについて市の見解を伺ってまいります。
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が施行され3年がたちました。市庁舎や公共施設での接遇や案内、手話・筆談・字幕等を含む通訳、市広報やホームページの情報発信などを含め、どのような施策を実施してきたのか、伺います。
○議長(菊池 彰君) 社会福祉課長。
○社会福祉課長(河野洋三君) お答えします。
障害者への公共施設における支援といたしまして、25年前の平成12年度から、現在の八幡浜庁舎社会福祉課に手話通訳者を配置するとともに、手話通訳者派遣事業を開始しております。
また、平成19年10月に四国で初めて公立病院に手話通訳者を配置し、医療現場での円滑なコミュニケーションを実現しています。
さらに、広報の分野においては、紙媒体だけでなく、ホームページ上で朗読ボランティア団体の協力の下、「声の広報」を実施しており、希望者にはCD等での配付も行っています。
なお、SNSでの情報発信も実施しており、LINE公式アカウント等を通してイベントの開催や防災情報など、市の取組等についてリアルタイムでお伝えしています。
以上です。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 今ほど様々な施策が上げられましたけれども、これらを全庁的な施策として全職員が共有されているのか、また市民の理解がどれほど深まっているのか、ここがポイントだと思いますので、今後もぜひとも確認をお願いいたします。
次に、災害時の情報保障体制について伺います。
本市では、高齢化及び単身世帯の増加に伴い、行政情報へのアクセスが困難な市民が増加しています。
さらに、海と山に挟まれた地形的特性から、津波や土砂災害のリスクを常に抱えており、災害時における確実な情報伝達は、命を守る手段として極めて重要であります。
しかしながら、現在の情報伝達手段は、防災行政無線、屋外放送、館内放送など、音声に偏っており、聴覚に障害のある方や高齢者にとっては十分な情報保障がなされていない状況であります。
災害時において、視覚的情報として、例えば手話、字幕、掲示板、スマホ通知などの手段をどのように整備し、どのような場面で活用されているのか、現状の体制について伺います。
○議長(菊池 彰君) 社会福祉課長。
○社会福祉課長(河野洋三君) お答えします。
御高齢の方ほどデジタル化された行政情報へのアクセスを苦手とする方もおられる中で、議員御指摘のとおり、災害時の情報伝達は命を守る手段として極めて重要になります。
現在、津波情報等はテレビのニュース字幕やスマートフォンの緊急通知など、視覚的手段でも提供されていますが、災害時の情報を市民により広く確実に伝達する上で、防災行政無線の音声が聞こえない聴覚障害者や高齢者に対する情報伝達には課題があると認識しています。
今後、関係機関と連携し、先進事例等を参考にしながら、多様な情報伝達手段の整備と活用について検討を進めてまいります。
以上です。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 現状の課題について十分に認識されているということで安心いたしました。
体制整備というのは、整備するだけではなく、その実効性が最も大事になると思います。
例えば8月31日、市内一斉避難訓練の際、当事者にそのときの状況等の聞き取り調査を行ったのか、そういった日頃からの積み重ねも必要かと思います。
といいますのは、さきの市議会議員選挙におきまして、無投票の情報伝達が音声に偏っていたため、実際に投票所に足を運ばれたり、また手話通訳者の方に問合せがあったように伺っております。
整備していることと機能していることは全く別問題でありますので、実効性の検証は欠かせないことを申し述べておきます。
先述の「あゆみの会」の皆さんからは、手話通訳者の養成が十分に行われておらず、人数の不足により行政手続等に不安があること、災害時の情報伝達への強い懸念があることなど、切実な声が寄せられました。
このような研究大会で報告された当事者の声をどのように受け止め、現状の課題として認識し、整理し、対応されてきたのか、伺います。
○議長(菊池 彰君) 社会福祉課長。
○社会福祉課長(河野洋三君) お答えします。
本年2月開催の令和6年度八幡浜市人権・同和教育研究大会の第3分科会において、手話サークル「あゆみの会」の皆さんから、聴覚障害者が情報取得やコミュニケーションの面で多くの困難を抱えており、特に災害時や緊急時に音声が中心となる情報伝達の場面において、聴覚障害者が必要な情報を取得することの難しさ、そしてその支援を行うには手話通訳者が不足している現状などが報告されました。
手話通訳者の養成は簡単にはいきませんが、現在、地域生活支援事業として社会福祉協議会に委託して実施している事業の一つである手話奉仕員養成講座は、定員10名ほどですが、受講無料で年間35回開催しております。
また、先ほどの答弁と重なりますが、災害等の非常時において、聴覚障害者等に対しても有効な情報伝達ツールの確保に向けて、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 既に始められているということで安心いたしましたけれども、先ほど申し上げたように、その実効性が大事になってきます。今すぐということではありませんが、例えば1年後、2年後に同じような悩みが出ないことを望んでおります。よろしくお願いします。
研究大会等の意義を考えますと、切実な声が置き去りにされてはならないと考えています。具体的な道筋を示してこそ答えとなります。今後もそういった機会を検証と改善の場として意義あるものにぜひしていただきたいと思います。
次に、手話施策の体系的な推進について3点伺います。
体系的推進とは、施策の土台となる条例を制定し、その理念を明確にした上で、既存の取組全体を見直し、優先順位をつけて順序立てて進めていくことと考えております。
1点目は、学校における手話の普及についてであります。
子供たちが自然に手話を身につけることは、聞こえる、聞こえないにかかわらず、互いに尊重し合う姿勢を育みます。そして、子供と大人がともに学ぶ環境をつくることによって、共生社会の基盤が形づくられると私は考えます。
市内小・中学校において手話を学ぶ機会や体験的な取組はどのように実施され、児童・生徒、教員からどのような反応があったのか、伺います。
○議長(菊池 彰君) 教育長。
○教育長(井上 靖君) 総合的な学習の時間において、全ての小・中学校が福祉について学ぶ機会を設定しています。
中学校の場合はコース別になる場合もありますけども、小学校では4年生または5年生のある時期に実施しており、内容としては、手話や点字を取り入れた学校が多くあります。
手話サークル「あゆみの会」の方に聞きますと、市内小・中学校14校ほぼ100%に近い状況で出前授業に行っていると聞いております。
授業の中では、身ぶり手ぶりで伝える体験や手話そのものについて学習しています。それらの学習を通して、子供たちは相手の伝えたいことをしっかり聞こうとする意識を高めるとともに、コミュニケーションの大切さを学んでいきます。講師の先生から簡単な手話を学んだり、手話をしながら歌を一緒に歌ったりと、楽しみながら学習ができています。
授業後の子供たちの感想の中には、手話を学ぶことで障害のある方々の存在を初めて知ったということや、いろいろな立場の人が住みやすい八幡浜市にしたいという前向きな感想を持つ児童もおり、福祉に関する学びを深めることができていると捉えています。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 ただいまの答弁の中に私が伺いたかったことが述べられておりました。私、これ個人的な感覚なんですけれども、決して手話を使う、学ぶ、手話を覚えることが目的ではなく、教育長の言われた手話も言語であることを理解させ関心を持たせるということが一番大切ではないかなと思っております。
そういった意味でも、児童・生徒が前向きな姿勢を見せたということ、大変心強く思っております。
2点目は、市民への広報・啓発活動についてであります。
手話は障害のある方だけに関わる特別な支援ではなく、社会全体で共有すべき言語であり、このことを一人でも多くの市民が理解することこそが支援の第一歩となります。
これまで手話に関する市民への広報・啓発、例えば公民館講座や地域の福祉学習など、市民が手話を身近に感じられる取組をどう展開してきたのか、伺います。
○議長(菊池 彰君) 市民福祉部長。
○市民福祉部長(宮下栄司君) お答えします。
八幡浜市では、聴覚障害者支援と手話普及のため、市民への広報・啓発活動を多角的に展開しています。
先ほども答弁しましたが、手話奉仕員養成講座を社会福祉協議会に委託し定期的に開催するとともに、手話サークル「あゆみの会」に対して活動費の一部を助成することで、市民の皆さんに日常的な手話学習と交流の場を提供しています。
また、市の各種イベントや講演会、二十歳のつどい、国際スポーツ大会などで手話通訳者を派遣するほか、映像媒体においては、市長の活動報告動画やCATVの年頭挨拶、募金キャンペーンCMなどに手話通訳者のワイプ画面を挿入するなど、聴覚障害者が情報にアクセスできる環境づくりを進めています。
これらの取組は、同時に手話通訳活動をイベントの参加者をはじめ広く市民に周知するよい機会になっています。
さらに、手話・日本語字幕付き映画の上映会を通じて手話文化への理解促進に努めるほか、学校や公民館、ボランティア団体からの単発の講演・学習会の依頼に応じ、幅広い層に手話の基礎や聴覚障害者の生活についての理解を深める機会を提供しています。
これらの活動は、聴覚障害者が社会参加しやすい環境を整えるとともに、市民全体の共生意識を醸成することにつながっていると考えています。
以上です。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 既に現在、多面的な施策が実施されていることは十分に理解できます。
私が思うのは、特に一般的な市民、例えば外出もしない高齢者、子供、そういうことも含めて、どこかのイベントとかということだけではなく、そういった全体的な広報がもっとできないかなという思いがあります。
最も効率的なのはやはり市広報だと思うんですけれども、例えばその一部に簡単な手話を継続的に載せて啓発を図る。これはほとんど費用もかかりませんし、少ない面積があればできます。そういったことをぜひ今後検討していただきたいと思います。
3点目は、手話通訳者の確保・派遣体制についてであります。
本市の行事は、今の説明もありましたけれども、手話通訳者の姿を見かけることがよくありますが、行政窓口での相談、地域の会議やイベント、さらには防災訓練や災害時など、日常生活のあらゆる場面でそのニーズは存在しています。
現在、本市の手話通訳者の確保・派遣体制はどのようになっているのか。
具体的には、担い手の人数や活動可能な時間帯の実態、人材の育成・研修体制、報酬などの処遇、これらについて現状を伺います。
○議長(菊池 彰君) 社会福祉課長。
○社会福祉課長(河野洋三君) お答えします。
八幡浜市手話通訳者等派遣事業について、委託先の八幡浜市社会福祉協議会に確認したところ、登録通訳者は12名で、そのうち厚労省認可試験を合格された手話通訳士が4名おられます。ここ数年、通訳活動を行っているのはそのうち7名で、平日の昼間に対応が可能なのは2名~3名の状況です。
活動時間帯につきましては、特に設定はありませんが、救急事案の際には、急遽夜間に依頼がある場合もあります。
続いて、人材の育成や研修体制ですが、年間5回ほどの自主研修の開催や県主催の研修会等に参加し、技術及び知識の向上に努められております。
また、この手話通訳者等派遣事業では、手話通訳士で時間単価2,000円、早朝・夜間の時間帯には割増し1.25~1.5倍、そのほか支弁旅費等を支給しています。
以上でございます。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 この質問は、手話通訳を依頼される立場になって考えてほしいという意図であります。
人数は足りているのか、報酬は適正なのか、労働形態、また人前に立つ多大なストレス、大変な仕事と私は思っております。
安定して継続的に勤めていただくために、今の状態で本当によろしいかということを改めて考えていただきたいと思います。
私たちは敬意を持って人材育成や処遇改善に取り組む必要を感じております。
次に、手話施策を体系的に推進する土台となる条例の意義について伺ってまいります。
その前に、少し長いんですけれども、手話を言語として位置づけることの政治的背景と現在の動向について触れておきます。
来る9月23日、八幡浜市民文化活動センターComican(コミカン)において、聴覚障害をテーマにした映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」が上映されます。9月23日は、1951年(昭和26年)に世界ろう連盟が設立された日であり、2017年(平成29年)の国連総会において「手話言語の国際デー」と定められた記念日であります。
国内では、2011年改正障害者基本法に初めて「言語に手話を含む」と明記され、全日本ろうあ連盟を中心とした手話言語法の制定を求める運動が全国に広がりました。
当八幡浜市議会でも、2014年12月定例会において「手話言語法の早期制定を求める意見書」を全会一致で採択しています。
その2年後、2016年には全ての地方議会が同様の意見書を採択し、史上初めて全議会一致の意見表明がなされました。
国会でも、2019年に野党から法案が提出されましたが、廃案になるなど、国の立法は進展しませんでした。
その間に、2013年には鳥取県が全国初の手話言語条例を制定するなど、地方自治体が先行して制度を整えてきたのが実態であります。
そうした経緯の中で、2022年(令和4年)国連障害者権利委員会は日本政府に対し、手話を公用語の一つとして認めるよう勧告を行いました。
さらに、本年11月には聴覚障害者のオリンピックに当たる「東京2025デフリンピック」が開催されるなど、国内外での関心が高まる中、本年6月、ついにといいますか、やっと手話施策推進法が国会において成立、施行されるに至りました。
同法は、手話を「使用者にとっての言語であり重要な意思疎通の手段」と位置づけ、その習得や使用に関する施策を政府と自治体に義務づけています。
さらに、第14条では9月23日を「手話の日」と定め、自治体にふさわしい行事の実施を努力義務としました。
先日の映画上映もまさにこの趣旨に沿った取組であり、手話が単なる言語以上に思いを伝える力を持つことを市民が実感できる機会になると考えます。
また、同法は、第7条に学校教育、第9条に職場環境整備、第10条に地域生活の環境整備、第13条に広報啓発、第15条に人材確保を掲げ、これらを自治体の責務としています。
つまり、先ほど質問いたしました、学校教育、市民への啓発、通訳者の養成や派遣といった施策は、既に法律上自治体が担うべき責務であり、本市としても現状を検証し、強化していくことが求められています。
このように、手話を言語として保障すべきだという国際的な流れの中で、全国の自治体が条例を制定してきたにもかかわらず、愛媛県だけがいまだに取り残されている現状があります。
本市を含む県内11市全てが全国手話言語市区長会に加盟していることを踏まえれば、手話を言語として認め、施策を推進することに対して積極的な姿勢を示す立場にあります。
にもかかわらず、条例空白県となっているこの現実を、市としてどのように受け止めておられるのか、見解を伺います。
○議長(菊池 彰君) 市民福祉部長。
○市民福祉部長(宮下栄司君) お答えします。
手話言語条例空白県に関する市の見解とのことですが、市議会において平成26年12月に地方自治法第99条に基づく意見書を国に提出されておられるように、本市も加入する全国市長会そして全国手話言語市区長会において国へ法整備の働きかけを行っており、法整備までの間、愛媛県内で条例の制定整備はなかったものの、決して県や県内の自治体が手話の普及に関して無関心だったわけではないと考えています。
本年6月25日に公布、施行された手話施策推進法は、「手話がこれを使用する者にとって日常生活及び社会生活を営む上で言語その他の重要な意思疎通のための手段であることを踏まえ、手話の学習や使用の支援、手話文化の保護、発展、そして国民の理解促進のための施策を総合的に進めることを目的」としています。
議員も御紹介されましたが、本法の中で9月23日を「手話の日」とすると設定されたことから、本市におきましても今月23日、法制定後初めてとなる「手話の日」を記念し、八幡浜聴覚障害者協会と手話サークル「あゆみの会」主催による映画上映会が開催されますが、本市も共催として一人でも多くの方に御来場いただくために、現在広報活動に力を入れているところです。
今後、市としても、手話施策推進法の施行を契機として、これまでの取組を振り返りながら手話の普及やその環境整備のために新たな施策を展開してまいりたいと考えています。
以上です。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 私の質問は条例空白県となっている現実をどう受け止められておられるのかということなんですけれども、ちょっと聞き漏らしたのかもしれませんが、ちょっと直接的な回答は得られていないというふうに私個人は思います。
市民の中にはやはり、なぜ本県だけが取り残されているのかといった不安や疑問の声も確かにあります。大切なのは、妙なバイアスにとらわれず、社会の動向、市民生活の実態を見据えて、市としての姿勢を明確に示すことであると思います。
本県とは相反するように、岡山県では2024年9月までに県を含めて全27市町村で手話言語条例が制定され、全国初の県内全自治体の条例制定を実現しています。この差が一体何か、皆さんに考えていただきたいと思います。
条例について述べましたのは、自治体が施策を継続的に進める最も確かな手段は条例の制定であると考えます。法律を具体化し、理念を明確にすることで、体系的かつ継続的に施策を展開することが可能となります。
そして、予算や人材配置を制度として裏づける上でも、条例は不可欠な基盤であると考えます。
これにより市民に不利益が生じることはなく、むしろ誰もが尊厳を持って生きられるまちづくりに直結すると思います。ゆえに反対する合理的な理由は見当たりません。
現在、愛媛県でも障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法や手話施策推進法に基づく新たな県条例制定の動きが見られます。県内の他市が後に続くかは定かではありませんが、本市として様子を見るのではなく、自ら動く姿勢を示すことが重要であります。その一歩が市民からの信頼と共感を生み出し、同時に市長の政治姿勢を力強く示すことにつながると私は考えます。
本市において手話施策を推進するための条例を制定することの意義とその方向性について、市長の見解を伺います。
○議長(菊池 彰君) 市長。
○市長(大城一郎君) 冒頭、議員のほうから手話を交えての一般質問がなされましたが、非常に意義深いことだと思います。本当に敬意を表したいと思います。
手話施策を推進するための条例の制定は、国の法律を具体的に地域の実情に即して展開し、市民一人一人の尊厳を守るまちづくりを体系的かつ継続的に推進する上で重要な位置づけにあると考えております。
条例化により、市の理念や施策の基本方針の明確化、行政内部の組織的な連携や関係機関・団体との協働促進など、手話を必要とする方々が安心して生活できる環境整備や情報発信の充実に資することが期待されております。
今後、手話施策を推進するための条例の制定に関しては、市民や関係団体の意見を丁寧に伺いながら、八幡浜市としても進取の気性をしっかりと発信して前向きに検討していきたいと考えております。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 ただいまの答弁を受け、1つ質問を追加いたします。
条例づくりにおきましては、手話を使う当事者、御家族、支援団体の声を丁寧に聞くことが実効性と説得力を高める道だと思います。
今、市長の答弁にも少し触れられましたけども、市民参画、当事者参画をどのように位置づけているのか、また今後検討を始めるとすれば、どのようなプロセスで進めていかれるのか、現在の状態で構いませんので、見解をお伺いします。
○議長(菊池 彰君) 市長。
○市長(大城一郎君) まずは、手話を使う人、ここであっては聴覚障害者の方だと思いますが、その方々とどうコミュニケーションを取るのか、これが一番難しいところだと思います。
私も聴覚障害者の大会に参加するときには挨拶しますが、そのときは、先ほど田中議員がやられたように、手話を交えて挨拶をします。手話を覚えるのになかなか大変です。伝わったか伝わらないかも分からないですが、挨拶をして終わったときに会場の雰囲気を見たら、伝わったんだなというようなことが分かります。それがコミュニケーションの第一歩だと思いますので、そういった機会を通して、まずは聴覚障害者の方々、団体の方々とどうコミュニケーションを取っていくか、そこが一番だと思いますので、そういう団体と膝を交えて話を聞いていく。どのようなことがお困り事なのか、どのようなことを条例としてやっていけばいいのか、市として手話を言語としてしっかりと認知してもらう、市民に対しても認知してもらう、そういうことをしていく上で、またサポート体制をいかに充実していくか、これを考えていく上で、当事者の方々と真剣に議論していきたいと、そこからまず始めたいと思います。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 大変前向きな姿勢伺いましたので、よろしくお願いします。
今、市長の答弁にも実は触れられたんですけども、来年6月には本市で愛媛県聴覚障害者大会が開催される予定です。伺うところによりましたら、過去に本市で同大会が開かれた際に、大城市長が手話による開会挨拶を行い、その姿が参加者に深い感銘を与えたとのことです。いろんな方からお伺いしました。
国がデフリンピック開催を契機に法整備を加速させたように、本市としても今回のこの大会を手話施策推進の絶好の機会と捉え、市長御自身のリーダーシップの下、速やかに具体的な取組を開始し、適切な時期に条例制定へと結実させていくことを強く期待しております。
この大会についてを含めて市長何かコメントはないでしょうか。障害者大会も含めて。質問ではありませんので、なければ結構ですが。
○議長(菊池 彰君) 市長。
○市長(大城一郎君) このような聴覚障害者の方々の大会が八幡浜で開催されるのも何年かに一度でありますので、八幡浜でやってよかったな、集まった方々が八幡浜に来てよかったな、八幡浜でやれてよかった、そして八幡浜のことを好きになって、ファンになってもらうような大会運営にしていきたいし、それを盛り上げれるような八幡浜市民の意識を醸成していきたい。それはやはり聴覚障害者の方々に対する市民の思いであったり、手話の言語を分かってもらう、そしてどういったことがサポートにつながるのか、そういったところも含めて大会をやった意義、実りある大会になるようにしていきたいと思っておりますので、ぜひ田中議員にも御協力のほどよろしくお願いいたします。
○議長(菊池 彰君) 田中繁則議員。
○田中繁則君 できることなら何でもやりますので、お声かけください。
結びです。
手話施策は単なる福祉支援の手段ではありません。言語として権利保障の対象であり、教育、防災、文化、人権など多分野にまたがる社会施策として位置づけられるものであります。
理事者には執行機関としての姿勢を伺ってまいりましたが、情報保障の在り方については、私たち議会自身も深く自省しなければならない課題であります。
西条市や今治市では、議会傍聴者に対して手話通訳や要約筆記サービスを提供するなどの取組が進んでいます。本市議会においても早急に対応していく必要があると考えます。
これは一つの事例にすぎず、当事者以外には見えにくく、気づきにくく、そして長らく見過ごされてきた課題に、私たちは正面から向き合う責務があります。
手話施策推進法の施行を受け、聴覚障害に対する施策推進について述べてまいりましたが、視覚障害を含めた障害特性に即した保障策を実装するなど、今こそ情報保障の基盤を強化する絶好の機会であります。行政と議会が両輪となってこの取組を推進していくことが、本市の未来に対する責任ある姿勢であることを申し上げ、質問を終わります。
